GUIDE — HEPBURN & KUNREI

ヘボン式と訓令式、タイピングはどっちで打つ?2025年のローマ字の告示と学校の変化

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タイピング無双 開発者

結論から書きます。キーボードで打つときは、ヘボン式でも訓令式でもかまいません。「し」は si でも shi でも打てます(変換表を確かめられたのは、Mozc とタイピング無双です)。タイピング無双は、設定にかかわらずどちらの綴りも正解にします。

2025 年 12 月 22 日に、国は「ローマ字のつづり方」を改めました(令和 7 年内閣告示第 4 号)。文化庁の Q&A(令和 8 年 2 月)は、この告示が情報機器の入力に影響するのかという問いに、「ローマ字入力の方法に何ら変更を求めるものではありません」と答えています(問 52)。

この記事は、告示の中身、学校の動き、綴りによる打鍵数の違い、ゲームの設定、保護者や先生が子供にどう伝えるかを、文化庁と文部科学省の資料をもとにまとめたものです。確かめられたことと、確かめられていないこと(教科書がいつ切り替わるか、など)は分けて書きます。私はタイピング無双の開発者で、ゲームの設定の話は後半に出てきます。

THE NOTICE

2025 年の告示で何が変わりましたか?

「ローマ字のつづり方」は、国語をローマ字で書き表すときの「よりどころ」を示す内閣告示です。2025 年 12 月 22 日の令和 7 年内閣告示第 4 号が、昭和 29 年(1954 年)12 月の内閣告示第 1 号・内閣訓令第 1 号に代わりました。2025 年 8 月 20 日に文化審議会が出した答申を、政府が採用したものです(文化庁 Q&A 問 1)。

いちばん大きな変更は、表が 1 つになったことです。これまでは「第 1 表」(いわゆる訓令式)と「第 2 表」(ヘボン式と日本式にあたるつづり)の 2 つがあり、どちらを使うか迷うことがありました。新しい告示は「本表」1 つで、shi・tsu・chi・fu・ji など、社会で実際によく使われている綴りを採っています(問 3・14・44)。

かな旧・第 1 表(訓令式)新・本表
しsishi
ちtichi
つtutsu
ふhufu
じ・ぢziji
づzuzu
しゃ・しゅ・しょsya・syu・syosha・shu・sho
ちゃ・ちゅ・ちょtya・tyu・tyocha・chu・cho
じゃ・じゅ・じょzya・zyu・zyoja・ju・jo
ka・sa・ta・na などの大半の音同じ綴り同じ綴り
出典: 「ローマ字のつづり方」(令和 7 年内閣告示第 4 号)の(付)対照表。第 1 表は、いわゆる訓令式と一致しています(文化庁 Q&A 問 44)。変わるのは、し・ち・つ・ふ・じとその拗音など、ごく一部の音です。

ただし、ヘボン式に統一されたわけではありません(問 49)。文化庁は、ヘボン式と呼ばれる綴りのうち、撥音に m を使う書き方と、ch の前の促音に t を使う書き方は採らず、長音の書き方には新しい考え方を取り入れたと説明しています。次の 3 点です。

  • 「ん」はいつも n

    新橋は Shimbashi ではなく Shinbashi です。b・m・p の前で m を使う書き方は採りませんでした(問 18・19)。

  • 「っ」は子音字を重ねる

    雑誌は zasshi、日直は nicchoku です。ch の前でも t は使わないので、抹茶は matcha ではなく maccha と書きます(問 20)。

  • 長音は符号か、母音字を並べる

    東北は、母音の上に符号を付けた Tōhoku か、現代仮名遣いどおりに母音字を並べた Touhoku です(添え書き 3)。母音字を並べる書き方は、ヘボン式とは異なる点です(問 49)。

古くからある書き方を禁じるものでもありません。judo・Tokyo・matcha のように国際的に使われる綴りや、個人名・団体名の綴り(Ohtawara など)は、当事者の判断を尊重し、直ちに変更を求めないとされています(添え書き 8・9)。パスポートのように各分野で定着したルールも、すぐに変えることは求めていません(問 54)。訓令式や日本式がなくなるわけでもなく(問 50)、この告示は法的な拘束力を持たない「よりどころ」です(問 42)。

KEYBOARD INPUT

告示はキーボードの入力を変えますか?

変えません。文化庁の Q&A(問 52)によると、「ローマ字入力」は、漢字仮名交じり文を表示する方法の一つとして、便宜的にローマ字つづりの仕組みを借りているものです。国語をローマ字のまま読み書きするための「ローマ字のつづり方」とは別のもので、告示はローマ字入力の方法に変更を求めていません。

二つが別のものだと分かる例があります。助詞の「は」「へ」「を」は、ローマ字で文を書くときは wa・e・o と書きます(添え書き 7)。しかしキーボードでは ha・he・wo と打ちます。

言葉ローマ字で書くとき(告示)キーボードで打つとき
助詞「は」waha
助詞「へ」ehe
助詞「を」owo
東北(とうほく)Tōhoku / Touhokutouhoku(「ō」は打ちません)
新橋(しんばし)Shinbashisinbasi / shinbashi
「書くとき」の列は告示の本文(添え書き 3・7 と例)、「打つとき」の列は Mozc の変換表とタイピング無双の判定で確かめました。

では、si と shi は、どちらでも「し」になるのでしょうか。日本語入力ソフトの側は、同じかなに複数の綴りを割り当てています。私が変換表を確かめられたのは、Google 日本語入力のもとになっているオープンソースの Mozc だけです。Mozc では、si と shi、ti と chi、tu と tsu、hu と fu、zi と ji が、それぞれ同じかなになります。Microsoft IME は公式の変換表が見つからず、確認できていません。お使いの環境で、メモ帳などに si と shi を打って、どちらも「し」になるか試してください。

SCHOOL

学校では、いつから何式を教えますか?

官公庁の資料で確かめられたことを、先に挙げます。

  • 小学校のローマ字は第 3 学年

    小学校学習指導要領の国語は、第 3 学年で「日常使われている簡単な単語について、ローマ字で表記されたものを読み、ローマ字で書くこと」を定めています。文部科学省が公開している同解説(国語編。2026 年 10 月 18 日に確認した版)には、ローマ字の表記は「ローマ字のつづり方」(令和 7 年内閣告示)を踏まえる、と書かれています。指導では、パスポートに載る氏名の表記など、外国の人とやり取りするときによく使われる表記を理解することと、日本語の音が子音と母音の組み合わせでできていることを理解することが重要とされ、必要に応じて対照表のつづり方も参考にできる、とあります。

  • 教科書の検定基準も、新しい告示に変わった

    文部科学省は、2025 年 12 月 22 日付の告示(文部科学省告示第 142 号)で、義務教育諸学校教科用図書検定基準の「ローマ字つづり」の基準を、昭和 29 年の告示から令和 7 年の告示によるものに改めました。以前の国語の検定基準は、小学校第 3 学年のローマ字について、昭和 29 年告示の第 1 表と第 2 表の両方を学べるように定めていました。その規定は、別表の改正にともなって削除されています。告示の施行の時点で検定を申請中だった教科書には、従前の例による経過措置があります。

今後の見通しも、確かめられた範囲だけ書きます。中央教育審議会の教育課程部会は、2026 年 10 月 5 日に次期学習指導要領に向けた「審議まとめ」を公表しました。答申や告示の前の、審議の段階の文書です。そこでは、ローマ字の学習は現行どおり国語科の小学校第 3 学年で行い、ローマ字入力によるタイピングは「総合的な学習の時間・情報の領域」を中心に学習する、という方向が示されています。決まったことではありません。学年ごとの目安は小学生のタイピングは何年生から?にまとめています。

KEYSTROKES

si と shi で、打鍵数と WPM はどう変わりますか?

タイピング無双の WPM は、「正しく打った打鍵数 ÷ 5 ÷ 経過分」で数えます(くわしくはWPM の平均と目安)。打鍵はキーを押した回数なので、「し」を si と打てば 2 打鍵、shi なら 3 打鍵です。同じお題でも、綴りによって打鍵の総数が変わります。

かな訓令式の綴り(打鍵数)ヘボン式の綴り(打鍵数)
しsi(2)shi(3)
ちti(2)chi(3)
つtu(2)tsu(3)
ふhu(2)fu(2)
じzi(2)ji(2)
しゃsya(3)sha(3)
ちゃtya(3)cha(3)
じゃzya(3)ja(2)
例: しちじ(七時)sitizi(6)shichiji(8)
例: じゅうしょ(住所)zyuusyo(7)juusho(6)
ゲームの「訓令式」「ヘボン式」の表示と同じ綴りで数えました。どちらの綴りも、タイピング無双はそのまま受け付けます。

言葉によって、どちらが少ないかは変わります。し・ち・つは短い綴りが 1 打鍵少なく、じゃ・じゅ・じょは ja・ju・jo のほうが少なくなります。同じ速さで 1 打ずつ打てるなら、打鍵数が少ない綴りのほうが、同じお題を早く打ち終えられます。ただし、キーの位置が打ちやすいか、迷わず打てるかも速さに効くので、短い綴りが必ず速いとは言えません。

タイピング無双の記録では、次のように、si・ji のような短い綴りで打つ人が多く見られます(2026 年 6 月 14 日〜10 月 18 日。研究への利用を許可した人のうち、3,000 打鍵以上打った 6,894 人。学校のクラスで使った児童生徒の記録は含みません)。

かな打つ綴り8 割以上その綴りで打つ人の割合
し・しゃsi・sya 系81.3%
し・しゃshi・sha 系3.7%
じji61.1%
じゃja 系(ja・ju・jo・je)58.5%
ふfu5.9%
ちchi0.9%
つtsu0.8%
子音の前の「ん」n 1 回0.3%
タイピング無双の記録。両方を混ぜて打つ人は、どちらの行にも入っていません。

この割合は、「みんな訓令式が好き」という意味ではありません。「ローマ字の打ち方」の設定を足す 2026 年 10 月中旬まで、ゲームは短い綴り(si・ti・tu・hu・ji など)をお題の下に表示していたので、表示どおりに打つ人が多いと考えられます。

1 人ごとの WPM の中央値で見ると、shi で打つ人の中央は 60、si 系で打つ人は 44 でした(試合数をそろえて比べても、shi の人のほうが高い結果でした)。ただし、shi の人は 3.7% と少数です。速い人が shi を選んでいる可能性があり、shi は 1 打鍵多いぶん WPM の数字にも影響しえます。この記録から「shi にすると速くなる」とは言えません。

GAME SETTING

タイピング無双の「ローマ字の打ち方」設定は何を変えますか?

設定ページの「ローマ字の打ち方」では、「おすすめ」「ヘボン式」「訓令式」から選べます。変わるのは、お題の下に表示するローマ字と、ホームポジション道場で光るキーだけです。打ったキーが合っているかの判定は、設定に関係なく、すべての綴りを受け付けます。「し」を shi と表示する設定でも si と打って正解になり、打ち始めた綴りに合わせて表示も追いかけます。

設定し・ち・つ・ふじしゃ・ちゃ・じゃぢ・づ子音の前の「ん」
おすすめ(既定)si・ti・tu・hujisya・tya・jadi・dunn
ヘボン式shi・chi・tsu・fujisha・cha・jaji・zun(1 回)
訓令式si・ti・tu・huzisya・tya・zyadi・dun(1 回)
お題の下に出る「ん」の表示です。n 1 回の表示は、次が子音のときだけで、母音・や行・な行の前と、お題の最後は nn のままです。

かなごとに綴りを選ぶこともできます(し・ち・つ・ふ・じ・しゃ行・ちゃ行・じゃ行・ぢづ・ん・っ・小さい字の 12 グループ)。式を選び直すと、かなごとの上書きは消えます。「打った綴りに合わせる」は、shi と打ったら次のお題から shi を出す機能で、既定ではオフです。

表の「訓令式」は、昭和 29 年告示の訓令式にあたる綴りです。ただし ぢ・づ だけは、zi・zu だと「じ・ず」になってしまうので di・du にしてあります。「ヘボン式」の ぢ・づ が ji・zu なのは、ゲームの判定が ji・zu も受け付けるためで、ふだんの日本語入力で「ぢ」「づ」を出すときは di・du を使います(文化庁の Q&A 問 46 も、情報機器の入力では「ぢ」「づ」を di・du で入力すると説明しています)。

FOR PARENTS & TEACHERS

子供にはどちらで打たせればいいですか?

どちらで打たせるのがよいかを比べた研究は、確認できていません。以下は、確認できた事実をもとにした、私の考えです。

  • 1. 「書くとき」と「打つとき」を分けて言う

    ローマ字の授業は、書くときの約束です。キーボードは、どのキーを押すかの話です。助詞の「を」は、書くときは o、打つときは wo、のように、違う例を 1 つ見せると伝わります。

  • 2. 学校で習った綴りで打ってよい

    ヘボン式を習ったなら shi、訓令式を習ったなら si で打って、タイピング無双では正解です。途中で切り替えても判定は変わりません。授業で一斉に教えるときは、学校の方針を優先してください。

  • 3. 短い綴りは、慣れてから考える

    si・ti・tu のように打鍵数が少ない綴りに変えるかどうかは、打つこと自体に慣れてからで十分です。ゲームの「ローマ字の打ち方」で表示を変えて、試すことができます。

  • 4. 名前のローマ字は別の話

    名前の綴りは、パスポートなど、それぞれの決まりに従います。文化庁の Q&A は、定着したルールの変更をすぐには求めていません(問 54)。

間違えやすい文字や、つまずきやすい打ち方はローマ字入力の一覧表と間違えやすい文字ランキングで確かめられます。授業での扱いはタイピング授業の指導案を見てください。

FAQ

よくある質問(FAQ)

  • Q. 小学校では、いつからヘボン式を教えますか?

    告示は 2025 年 12 月 22 日で、教科書の検定基準も同日付で新しい告示によるものに改められました。ただし、実際の教科書や授業がいつ新しい表記になるかは、官公庁の資料では確認できていません。お子さんの学校と教科書の案内で確かめてください。

  • Q. si で打つのは間違いですか?

    間違いではありません。Mozc の変換表では si も shi も「し」になり、タイピング無双の判定も両方を受け付けます。ご自分の日本語入力でも、メモ帳などで試せます。

  • Q. 訓令式は、もう使えなくなりますか?

    なくなりません。文化庁の Q&A は、訓令式や日本式がなくなるわけではなく、これからもそれぞれの考え方で用いられることがありうる、と答えています(問 50)。

  • Q. パスポートの綴りは変わりますか?

    文化庁の Q&A は、パスポートのように各分野で定着したルールについて、すぐに変更することを求めていないと答えています(問 54)。パスポートの規則そのものは、発行する機関に確認してください。

  • Q. ゲームの設定をヘボン式にすると、si では打てなくなりますか?

    打てなくなりません。設定で変わるのは表示と光るキーだけで、判定はいつも全部の綴りを受け付けます。

SOURCES

出典

告示・学校・入力に関する記述は、次の資料で確かめました(確認日:2026年10月18日)。ページ番号はPDFの通しページです。ゲームの設定は、タイピング無双の仕様とコードで確かめています。

  1. 文化庁「ローマ字のつづり方」(令和7年内閣告示第4号・令和7年12月22日)と内閣訓令第1号 — 告示本文のPDF(p.1〜7)で、前書き、本表、添え書き、(付)対照表を確認
  2. 文化庁国語課「『ローマ字のつづり方』(令和7年内閣告示第4号)に関するQ&A」(令和8年2月) — 問1・3・14・18〜20・42・44・46・49・50・52・54
  3. 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」 — 第3学年及び第4学年の内容(p.80〜83)。2026年10月18日に取得した版
  4. 文部科学省「義務教育諸学校教科用図書検定基準及び高等学校教科用図書検定基準の一部を改正する告示の概要(報告)」と文部科学省告示第142号 — p.1〜5
  5. 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日) — 第1部 p.140。答申・告示の前の、審議の段階の文書
  6. Mozc(Google 日本語入力のもとになっているオープンソース)のローマ字変換表 romanji-hiragana.tsv — 公的機関の資料ではありません。si と shi など、同じかなになる綴りの確認に使いました
  7. タイピング無双の記録(2026年6月14日〜10月18日。研究への利用を許可した人のうち、3,000打鍵以上の6,894人) — 学校のクラスで使った児童生徒の記録は含みません

SUMMARY

まとめ

2025 年 12 月 22 日のローマ字の告示で、書くときの表は「ヘボン式に準ずる」1 つになりました。しかし、文化庁は、ローマ字入力の方法の変更を求めていないと明言しています。確かめられた範囲では、キーボードでは si でも shi でも打てるので、子供には学校で習った綴りで打たせてかまいません。

学校の教科書や授業が、いつどう切り替わるかは、まだ官公庁の資料で確かめられていません。確かめられたら、この記事を更新します。

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