GUIDE — LESSON PLAN
タイピング授業の指導案 — 1コマ(45分・50分)の流れと、評価の見取り方
- 公開
- 更新
- 著者
- タイピング無双 開発者
タイピングの授業(1コマ・45分または50分)は、導入・展開・まとめの3つに分け、展開の中心を「自分の画面で練習して、自分の記録を見る」時間にすると組み立てやすくなります。この記事では、初めての1コマを例に、時間配分と先生の動きを表にしました。
書いているのは、無料のタイピングゲーム「タイピング無双」を運営している開発者です。指導案の例の中で、このゲームのモードを使います。めあて・振り返り・評価の見取り方といった骨組みは、ほかの教材でもそのまま使えます。なお、国が示した標準の指導案があるわけではありません。ここにあるのは、運営者が考えた一例です。
ゲームの機能・費用・導入の手続きは先生方へに任せ、この記事では授業の組み立てに絞ります。学校の端末で開けるかどうかの準備は、Chromebook・学校PCでの準備にまとめました。
POINTS
1コマの組み立てで、先に決めることは?
指導案を書く前に、次の3つを決めておくと迷いません。
1. 初めての1コマに、入れすぎない
初めての1コマは、指の定位置(ホームポジション)を知り、定位置から打つところまでに絞ります。国の資料(情報活用能力育成のためのアイデア集)も、ホームポジションを意識して繰り返し入力することを挙げています。速さを競う場面は、定位置が身についてからで間に合います。
2. 記録を残す場面を、1コマの中に作る
同じ資料は、朝の時間などに繰り返し練習し、日々の結果を記録して伸びが確認できるようにする例を挙げています。1コマの最後に、自分の記録を見て書く時間を取ります。
3. 評価は、単元のまとまりの中で考える
中央教育審議会の報告(平成31年1月)は、毎回の授業で全ての観点を評価するのではなく、単元や題材などのまとまりの中で評価の場面を位置づけることを求めています。1コマで3観点すべてを見取る必要はありません。
OFFICIAL DOCUMENTS
国の資料は、タイピング指導について何と言っていますか?
文部科学省の資料から、指導案の前提になる点を4つ拾います。どれも、1コマの標準的な流れを示したものではありません。
学習指導要領(小学校・平成29年告示) 総則 第3の1(3)ア
各教科等の特質に応じて、「児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動」を計画的に実施することとされています。解説では、「学習活動を円滑に進めるために必要な程度の速さでのキーボードなどによる文字の入力」を確実に身に付けさせることが重要とされています。数値の基準は書かれていません。
情報活用能力調査(令和3年度)の結果と、国の目標
キーボードで1分間に入力した文字数の平均は、小学5年が15.8文字、中学2年が23.0文字、高校2年が28.4文字でした。国は、令和8年(資料の表記は「R8」)までに、小学生40字、中学生60字を目標にしています。単位は「文字/分」で、タイピングゲームのWPMとは数え方が違います。数字の詳しい読み方は、小学生のタイピングは何年生から?と中学生・高校生のタイピング平均にあります。
情報活用能力育成のためのアイデア集
ローマ字入力は母音の入力頻度が高いので、ホームポジションからの「あいうえお」の位置を意識して、繰り返し入力して確実に身に付けることが大切、とされています。ほかに、ゲーム感覚で楽しみながら何度も練習すること、コンテストなどで成果を発揮する場面をつくること、外付けキーボードの端末でも取り付けて練習できるようにして練習量の差が生まれないようにすること、が書かれています。
GIGA StuDX 推進チームの学習会資料(令和8年3月4日)
学校の事例として、「タイピング練習を目的とした時間を確保」「短い言葉から、少しずつ」「記録を残して成長を実感」「大会や選手権を実施」「目標の達成者を掲示」が紹介されています。事例の紹介であり、効果を比べた調査ではありません。
制度の全体像(次の学習指導要領に向けた動きを含む)は、学校のタイピング教育の今で整理しています。
BEFORE THE LESSON
授業の前に、何を確かめておきますか?
準備は特別なものではありません。授業の前に確かめておくと、最初の5分でつまずきにくい点を挙げます。
物理キーボードのある端末で
画面のキーボードでは打てません。タブレットは、外付けの物理キーボードをつなぎます。スマートフォンでは、ゲーム画面は開かず、公式サイトの案内が出ます。iPadの場合はiPad・スマホでタイピング練習はできる?を見てください。
児童生徒が使う端末で、先生が一度開く
学校のフィルタリングで開けない場合があります。授業の前に、児童生徒が実際に使う端末で、道場まで進めるかを一度確かめてください。手順はChromebook・学校PCでの準備、開けないときの依頼文は学校のフィルタリングで開けないときにあります。
初めて開く日だけ、読み込みが多い
その端末・ブラウザで初めて開くときだけ、約12.8MBを読み込みます。2回目以降は約0.15MBです。40人が一斉に初めて開くと、合計は約500MBになります。初めての授業の前に一度開いておくと、当日はすぐ始められます(運営者の計測・2026年10月7日)。
姿勢と休憩
文部科学省のガイドブックは、目と端末の距離を30cm以上にすること、30分に1回は20秒以上、画面から目を離して遠くを見ることを挙げています。ゲームにも「休憩のお知らせ」があり、30分続けて遊ぶと20秒の休憩が出ます。初期設定でオンです。対戦中や道場のプレイ中には出ず、メニューなどの普通の画面に来たときに出ます。
日本語入力は、オンのままでも打鍵を拾う設計
ゲームはローマ字のキー(a〜z、0〜9、カンマ、ピリオド、ハイフン)だけを受け付けます。日本語入力(IME)がオンのままでも、押した物理キーから打鍵を拾う設計です。それでも反応しない端末があれば、IMEをオフにして試してください。
LESSON PLAN
初めての1コマ(45分・50分)の指導案の例
ほとんど打ったことのない学級の、初めての1コマを例にします。
本時のねらい(例): 指の定位置(ホームポジション)を知り、定位置から画面を見ながら打つ。自分の最初の記録を残す。
準備: 物理キーボードのある端末。授業の前に開けることを確認した状態。ゲストのまま遊べます。学校向け機能を使う場合は、課題「ホームポジション道場 ステージ◯まで」を先に出しておきます。
| 段階 | 時間(45分/50分) | 学習活動と先生の動き | ゲームでの使い方 |
|---|---|---|---|
| 導入 | 8分 / 8分 | めあてを伝える。両手の人差し指をFとJに置き、残りの指を並べる。多くのキーボードは、この2つのキーに指でわかる突起がある(端末で違うので、先生が事前に確かめる)。姿勢と、目と画面の距離(30cm以上)を確かめる。 | まだ児童生徒には開かせない。先生が画面を映して、ホームポジション道場の始め方を見せる。 |
| 展開1 | 20分 / 24分 | ホームポジション道場を、自分のペースで進める。先生は机間指導で、視線が手元に落ちていないか、指が定位置から離れていないかを見る。早く進んだ人は先のステージへ。進みが遅い人は、同じステージをやり直してよいと伝える。 | 第1章(ステージ1〜10)で、F・J・D・K・S・L・A・G・Hのキーを順に覚える。師範が案内する。前のステージをクリアすると、次のステージが開く。 |
| 展開2(選択) | 7分 / 8分 | 学級の実態に合わせて選ぶ。すでにローマ字入力に慣れている学級は、速度演習を1回行い、はじめの記録(WPM・正確率・ミス・苦手キー)をメモする。ほとんど打てない学級は、この記録を次の回に回し、展開1の続きにあてる。スコアで競わせない。 | 速度演習はSPACEキーで始まり、3秒のカウントダウンのあと60秒。ESCで中断すると記録は残らない。結果の画面に、WPM・正確率・最大コンボ・ミス・苦手キーが出る。 |
| まとめ | 10分 / 10分 | 振り返りカードに、①進んだステージ ②むずかしかったキーや指 ③次の1コマの目標、を書く。隣の人と、互いの指が定位置から離れていないかを見合う。次回の予定(帯活動で10分ずつ続ける、など)を伝える。 | 道場の画面で到達したステージを確かめる。速度演習をした場合は、結果の画面の数字を写す。課題を出していれば、達成の印が自動で付く。 |
1コマでホームポジション道場のどのステージまで進むかは、運営者も実測を持っていません。目標のステージは低めに置き、次の回の様子を見て直すのが安全です。
NEXT LESSONS
2コマ目以降は、どう組み立てますか?
初めの1コマのあとは、学級の様子に合わせて次のどれかを組み合わせます。回数や長さの公的な基準は見つかっていません。期間や頻度の考え方は、タイピングは毎日どれくらい練習すれば速くなる?を参考にしてください。
帯活動(朝や授業のはじめの10〜15分)
速度演習(60秒)と、正確演習(10語をノーミスで打つ。1打でもミスすると終わり)を組み合わせます。お題は辞書から出るので、毎回同じ語ではありません。1回の数字で一喜一憂せず、自己ベストや数回の傾向で見ます。学校向け機能の成長記録は、「はじめの10回」と「直近の10回」の平均を比べます。
模擬戦闘(CPUと180秒の対戦)
第1陣のCPUは5WPMで、陣が1つ上がるごとに3WPMずつ強くなります。勝つと次の陣が開きます。時間切れは、残りHPの多い方が勝ちです。引き分けは負け扱いです。
クラス内の友達対戦・大会
部屋を作って6文字のルームコードを伝えると、同じ部屋の人と対戦できます。1対1と2対2があり、レートは動きません。部屋の主は、HPの倍率(0.5〜3.0倍)を側ごとに変えて、力の差を埋められます。チャットと音声はなく、文字のスタンプだけです。手順は友達とタイピング対戦する方法にあります。
対戦を授業中に止める設定
学校向け機能では、クラスごとに「授業中は対戦を止める」を設定できます(初期設定はオフ)。オンにすると、授業の時間帯は、ランダム対戦・2対2・友達対戦・挑戦状を始められません。道場は止まりません。先生が対戦を解放すると、使えるようになります。
ランダム対戦は、世界中のプレイヤーと当たります。相手が見つからないときは、実プレイヤーの戦績をもとにしたCPUが相手になり、これもレートの対象です。相手のゲーム内ユーザー名が画面に出ます。授業で使うかどうかは、学校の方針で決めてください。
ASSESSMENT
評価は、どう見取りますか?
観点別学習状況の評価の3観点は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」です(平成29年改訂)。
中央教育審議会の報告(平成31年1月21日)には、次の趣旨が書かれています。1つ目は、毎回の授業で全ての観点を評価するのではなく、単元や題材などのまとまりの中で評価の場面を位置づけること。2つ目は、情報活用能力のような教科等横断的な資質・能力は、各教科等の3観点の評価に反映すること。3つ目は、「主体的に学習に取り組む態度」は、挙手の回数やノートの取り方のような形式的な活動ではなく、学習の自己調整を行いながら粘り強く取り組んでいるかという意思的な側面を評価することです。
つまり、タイピング専用の観点があるわけではありません。授業を行う教科等の観点に照らして、ゲームの記録を根拠資料の1つとして使うことになります。次の表は、その例です。
| 観点 | 見取りの例 | 根拠にできる記録 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 指の定位置と、各指が担当するキーがわかり、定位置から打てる。 | 道場の到達ステージ。正確演習の結果。机間指導での観察。 |
| 思考・判断・表現 | ミスや苦手キーの記録から、次に直すことを選び、自分の言葉で書いている。 | 振り返りカードの記述。学校向け機能の課題「苦手キーの分析」の提出(唯一の提出型の課題)。 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 自分の目標を持ち、やり方を見直しながら、粘り強く練習を続けている。 | 目標と見直しを書いた記述。成長記録(はじめの10回と直近の10回の比較)。練習の回数やWPMの高さだけを、この観点の点にはしない。 |
数値の基準について。学年ごとの公的なWPMの基準は、見つかっていません。公的な数字は、文部科学省の調査にある「文字/分」だけです(中学生・高校生のタイピング平均)。基準を置くなら、学級のはじめの記録からの伸びを使うのも1つの考え方です。はじめの差の影響を受けにくくなります。WPMの定義はWPMの平均と目安にあります。
次の学習指導要領に向けて、学習評価の在り方は検討中です(中央教育審議会 総則・評価特別部会・令和8年3月30日の資料)。年度ごとの扱いは、学校の評価計画で確認してください。
NOTES
授業で使うときの注意点は?
授業で使う以上、確かめておきたい点を4つ挙げます。
対戦は、段階的に広げる
運営者の提案です。道場、模擬戦闘、クラス内の友達対戦の順に広げると、授業の見通しが立てやすくなります。ランダム対戦を授業で使うかどうかは、学校の方針で決めてください。
学校の情報は、対戦相手に見えない
出席番号・クラス内の表示名・学校のメールアドレスは、対戦相手・公開ランキング・公開プロフィールに出ません。チャットはなく、広告も表示しません。取り扱う情報の詳細は学校向け機能における個人情報の取扱いにあります。
ゲストの記録は、そのブラウザに残る
ゲストのまま遊ぶと、記録はそのブラウザに紐づきます。別の端末で続けるには、Googleアカウントでログインします。共用の端末では、この点を最初に伝えてください。
クラスの進み具合を見る機能は、学校向け機能にある
課題の配布、進捗ボード、採点簿、成長記録、CSV出力は、学校向け機能で提供しています(試験提供中)。費用と条件は先生方へで確かめてください。
FAQ
よくある質問
Q. 1コマで、道場のどのステージまで進みますか?
運営者は実測を持っていません。学級の実態で大きく変わると考えられます。最初の回は目標のステージを低めに置き、次の回の様子を見て直してください。
Q. 授業で使うのに、費用や登録は必要ですか?
ゲーム本体は無料で、広告は表示せず、ゲストのまま全機能が使えます。学校向け機能(課題の配布・進捗の一覧など)の費用と条件は、先生方へで確かめてください。
Q. iPadでも授業に使えますか?
外付けの物理キーボードをつなげば遊べます。画面のキーボードでは打てません。詳しくはiPad・スマホでタイピング練習はできる?を見てください。
Q. 授業中に、児童生徒が対戦を始めてしまいます。
学校向け機能の「授業中は対戦を止める」をオンにすると、授業の時間帯はランダム対戦・2対2・友達対戦・挑戦状を始められなくなります。道場は止まりません。先生が対戦を解放することもできます。
Q. 評価に使うWPMの基準は、いくつですか?
学年ごとの公的なWPMの基準は、見つかっていません。公的な数字は、文部科学省の調査にある「文字/分」だけです。基準を置く場合は、学級のはじめの記録からの伸びを使うのも1つの考え方です。
SOURCES
出典
この記事の国の資料の引用は、次の資料で確かめました(確認日:2026年10月18日)。ページ番号はPDFの通しページです。ゲームの仕様と通信量は、運営者の調べです。
- 文部科学省「情報活用能力育成のためのアイデア集」(令和5年3月、令和6年3月・令和7年3月改訂) — p.7(キーボードによる文字入力:ホームポジション、朝の時間の練習と記録、ゲーム感覚、コンテスト、外付けキーボード)
- 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成31年1月21日) — p.9(主体的に学習に取り組む態度)、p.14〜15(教科等横断的な資質・能力の評価、評価を行う場面や頻度)
- 中央教育審議会 教育課程部会 総則・評価特別部会(令和8年3月30日)資料1-1「学習評価の在り方について 検討資料⑧」 — 次期学習指導要領に向けて学習評価の在り方を検討していること
- 文部科学省 GIGA StuDX推進チーム プチ学習会「知りたい!タイピング指導」(令和8年3月4日) — 学校の事例(p.4・p.7・p.9・p.14・p.15)
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」 — コンピュータ等や教材・教具の活用、コンピュータの基本的な操作やプログラミングの体験(p.91・p.93)
- 文部科学省「情報活用能力調査 調査結果」(令和5年3月) — 概要(p.3)、2.4 文字入力の特徴(p.56〜57)
- 文部科学省「教育DXに係る当面のKPI」(令和6年4月22日 デジタル行財政改革会議(第5回)資料4) — KPI一覧(p.3)。年は「R8」と表記
- 文部科学省「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」(令和4年3月改訂版) — p.8〜10・p.14(距離・休憩)
SUMMARY
まとめ
タイピングの1コマは、導入・展開・まとめに分け、展開の中心を「自分の画面で練習して、自分の記録を見る」時間にします。初めての1コマは、指の定位置を知り、定位置から打つところまでに絞ります。評価は、単元のまとまりの中で、教科等の観点に照らして考えます。回数やWPMの高さだけを、態度の点にしないでください。
まず先生が、ホームポジション道場の第1章を1ステージだけ触ってみてください。授業の前に、児童生徒が使う端末で開けることも確かめておくと、当日の見通しが立ちます。