Q&A — TYPING IN SCHOOLS
学校のタイピング教育の今 — 文科省の目標・学習指導要領・情報Ⅰを出典つきQ&Aで
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学校のタイピング教育の今を、官公庁の資料と公表された論文で確かめたことだけで、Q&Aにまとめます。先に要点です。
① 学習指導要領は、小学校でコンピュータへの文字入力を習得する学習活動を求めていますが、速さの数字や開始学年は書いていません。
② 国の目標は、1分あたりの入力を令和8年までに小学生40字・中学生60字にすることです。令和3年度の調査では、小5が15.8字、中2が23.0字でした。
③ 高校には必履修の「情報Ⅰ」があり、大学入学共通テストにも「情報」があります。
④ 次期学習指導要領は審議まとめの段階で、ローマ字入力のタイピングを小学校の「情報の領域」で学ぶ方向です。答申と告示の前なので、決定ではありません。
出典はすべて文部科学省・文化庁・大学入試センターなどの資料や論文で、確認日は2026年10月18日です。報道や解説サイトだけが出典のものは書いていません。制度は変わるため、最新は各機関のサイトで確かめてください。運営者(タイピング無双の開発者)が書いています。
Q1
学習指導要領に、タイピングはどう書かれている?
「コンピュータで文字を入力する」学習は書かれています。「何字/分」や開始学年は書かれていません。本文と解説で書き方が違うので、分けて表にします(平成29年告示の小学校学習指導要領と、その解説)。
| 場所 | 書かれていること | 本文か解説か |
|---|---|---|
| 総則 第3の1の(3)のア(小学校) | 「児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動」を、各教科等の特質に応じて計画的に実施する。 | 本文 |
| 総則編の解説(同じ項目) | 小学校段階では情報手段に慣れ親しませることから始め、「学習活動を円滑に進めるために必要な程度の速さでのキーボードなどによる文字の入力」などの基本的な操作を確実に身に付けさせる学習活動を、計画的に実施していくことが重要。 | 解説 |
| 国語 第3学年及び第4学年 (1) ウ | 「第3学年においては、日常使われている簡単な単語について、ローマ字で表記されたものを読み、ローマ字で書くこと」。 | 本文 |
| 国語 内容の取扱い 第3の2 (1) ウ | 第3学年のローマ字の指導は、総合的な学習の時間に示す、コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作を習得することとの関連が図られるようにする。 | 本文 |
| 総合的な学習の時間 第3の2 (3) | 探究的な学習の過程で、「コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得し、情報や情報手段を主体的に選択し活用できるよう配慮すること」。 | 本文(総則編の解説が引用) |
解説は、各教科等で情報手段を活用するには、少なくとも児童が学習活動に支障のない程度に操作を身に付けている必要がある、とも述べています。
「タイピング」という語は、総則編と国語編の解説には出てきません(PDFの本文を検索して確認しました)。速さの数字もありません。「キーボードなどによる文字の入力」は、本文ではなく解説の文言です。
中学校では技術・家庭科の技術分野「情報の技術」、高校では情報科(情報Ⅰ・情報Ⅱ)で情報を学びます(文部科学省の会議資料による整理)。小学生向けの進め方は小学生のタイピングは何年生から?に書きました。
Q2
文科省は、子供の入力速度を調べている?
調べています。文部科学省の「情報活用能力調査」(令和3年度実施)に、キーボードによる1分間の文字入力数があります。対象は、全国から抽出した479校の小学5年生・中学2年生・高校2年生です(抽出調査)。
| 学年 | 平均(字/分) | 中央値(字/分) | 1分に40字程度以上の割合 |
|---|---|---|---|
| 小5 | 15.8 | 14.7 | 2.3% |
| 中2 | 23.0 | 21.3 | 6.4% |
| 高2 | 28.4 | 26.3 | 13.9% |
課題文は285文字(漢字かな交じりなど)で、時間は3分間です。単位は入力できた文字の数(字/分)で、WPMとは違います。詳しい分布と読み方は小学生のタイピングは何年生から?に書きました。
実施は令和4年1〜2月です。文部科学省の調査ページ(確認:2026年10月18日)には、これ以降の調査結果も、次回の実施予定も載っていませんでした。
Q3
文科省の目標(KPI)は、いくつ?
1分あたりの平均文字入力数を、令和8年までに、小学校で40字、中学校で60字にする、という目標です。令和6年4月22日のデジタル行財政改革会議(第5回)に文部科学大臣が出した資料「教育DXに係る当面のKPI」にあります。
| 指標 | 現状(令和3年度調査) | 目標(令和8年) |
|---|---|---|
| 1分あたりの平均文字入力数(小学校) | 15.8字 | 40字 |
| 1分あたりの平均文字入力数(中学校) | 23.0字 | 60字 |
| 情報活用能力の習熟度:小学校でレベル3以下の割合 | 49.9% | 20%以下 |
| 情報活用能力の習熟度:中学校でレベル5以下の割合 | 57.1% | 20%以下 |
40字は、令和3年度の小5の平均(15.8字)の約2.5倍です。同じ調査で、1分に40字程度以上できた小5は2.3%でした。
この目標は、国の施策の進み具合を測る指標です。一人ひとりの子に求める基準とは、資料に書かれていません。資料には「取組の進捗を踏まえて継続的に見直す」という注記があります。令和8年の達成状況は、公表された値を見つけられませんでした。
公的な目標は「字/分」で示されています。公的な学年別のWPM目標は、見つかりませんでした。
Q4
GIGAスクールで、端末とキーボードはどうなった?
端末は広がりました。キーボードは、GIGAスクール第1期にキーボードを調達しなかった事例が見られたと、文部科学省は述べています。
1人1台端末の整備
文部科学省の資料は、令和2〜3年度に「1人1台端末」と高速通信ネットワークを集中的に整備した、としています。ガイドブックは、令和3年4月から全国のほとんどの義務教育段階の学校で、新しい学びが本格的に始まったと述べています。児童生徒1人当たりの学習者用コンピュータは、平成31年3月の0.2台から、令和6年3月の1.1台になりました。
キーボード
文部科学省は、令和6年4月17日の「学習者用コンピュータ最低スペック基準」で、Windows・ChromeOS・iPadOSの3種とも、周辺機器にハードウェアキーボードとタッチペンを含めました。GIGA第1期の調達でキーボードを調達しなかった事例が見られたと述べ、学習指導要領の解説を踏まえて「キーボードの整備は必須」としています。USキーボードを選ぶことも可能で、無線キーボードは電波干渉に留意し、有線が望ましいとされています。
端末の更新
令和5年度補正予算額2,661億円の「GIGAスクール構想の推進」で、端末の更新が進められています。都道府県に5年間の基金をつくり、補助基準額は1台5.5万円、補助率は3分の2です。
OSごとの割合
文部科学省・デジタル庁の公表値は見つかりませんでした。民間調査の数字は、この記事では扱いません。
学校のChromebookで使うときの準備は、Chromebook・学校PCでの準備にまとめています。
Q5
高校の「情報Ⅰ」と共通テスト「情報」で、タイピングは関係する?
確認した資料には、タイピングの速さを扱う記述はありませんでした。制度は、次のとおりです。
高校「情報Ⅰ」
令和4年度から、高等学校情報科に共通必履修科目「情報Ⅰ」が新設され、全ての生徒がプログラミングやネットワーク、データベースの基礎等について学習します(文部科学省)。「情報Ⅰ」は必履修(2単位)、「情報Ⅱ」は選択科目です。
共通テスト「情報」
大学入試センターの資料によると、令和7年度(2025年1月)から「情報」が出題教科に加わり、科目『情報Ⅰ』は試験時間60分、配点100点です(令和7年度は経過措置として、旧課程の履修者は『旧情報』を選ぶこともできました)。令和9年度(2027年1月16・17日実施予定)の「出題教科・科目の出題方法等」でも、『情報Ⅰ』は60分(100点)です。出題範囲は、科目名に含まれる学習指導要領の科目、つまり「情報Ⅰ」の内容です。
タイピングとの関係
確認した2つの資料(令和7年度の説明協議会資料、令和9年度の出題方法等)に、キーボード入力の速さやタイピングに関する記述はありませんでした。文部科学省が「情報Ⅰ」の内容として挙げているのは、プログラミング、ネットワーク、データベースの基礎等です。入試の詳しい実施方法は、大学入試センターの最新の資料で確かめてください。
Q6
次期学習指導要領で、タイピングはどうなる?
審議まとめの段階で、決定ではありません。中央教育審議会の教育課程部会が、令和8年10月5日に「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を公表しました。答申と告示は、これからです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 審議まとめ | 令和8年10月5日(教育課程部会) |
| 中央教育審議会の答申 | 冬頃の予定 |
| 学習指導要領の改訂(告示) | 年度末の予定 |
| 先行実施(経過措置) | 小学校は令和10年度から、中学校は令和11年度から、新教科・領域を段階的に先行実施する経過措置を講ずることが適当、とされています。 |
| 全面実施 | 小学校は令和12年度から、中学校は令和13年度からを想定しています。 |
ローマ字は国語、ローマ字入力のタイピングは情報の領域
審議まとめ(国語)は、「ローマ字の学習は、現行どおり国語科において小学校第3学年で行うこととしつつ、ローマ字入力によるタイピングについては、「総合的な学習の時間・情報の領域」を中心に学習を行うこととする」としています。国語の精選の方針にも、「情報の領域等との役割分担による内容の精選」として、「小3タイピングは情報へ移行等」が挙げられています。
現行と、案の違い
審議まとめの資料は、現行では国語の第3学年で、ローマ字の指導に関連して、コンピュータでローマ字などの文字を入力する基本的な操作を学習する、と整理しています。案では、情報の領域で、キーボードで文字を入力する基本的な方法や、反復して習得していく大切さなどを、体系的に扱います。
情報の領域
小学校の総合的な探究の時間(現在の総合的な学習の時間)に「情報の領域」を付け加え、「探究の領域」と合わせた2つの領域にする案です。学習イメージの例に、「タイピング:キーボードで文字を入力する基本的な方法を学ぶとともに、Web上の練習サイト等を使ってみながら、慣れるまで反復することが大事であることに気付く」があります。
低学年
低学年は、国語で「児童の実態に即した簡易な文字入力(手書き入力、キーボード入力、タッチパネル入力等)」と整理されています。低学年での体験を踏まえ、系統的な学習を始める、という流れです。
審議まとめの中では、小学校の「総合的な学習の時間」が、「総合的な探究の時間」と書かれている箇所と、「総合的な学習の時間」と書かれている箇所があります。「情報の領域」に「(仮称)」と付いている箇所もあり、資料編には「特にタイピングは国語科との役割分担を検討する必要」という注記もあります。名称を含め、細部は今後の整理を待つ必要があります。中学校は技術・家庭科の技術分野を再編して新教科「情報・技術科」を置く案、高校は情報科(情報Ⅰ・情報Ⅱ)の内容をさらに充実する方向です。
授業の進め方への影響は、タイピング授業の指導案で扱います。
Q7
タッチタイピングは、学校で必要とされている?
学習指導要領の本文・解説(総則編・国語編)と、審議まとめには、タッチタイピング(ブラインドタッチ)という語も、手元を見ずに打つことを求める記述も、見当たりません(PDFの本文を検索して確認しました)。求められているのは、解説にある「学習活動を円滑に進めるために必要な程度の速さでのキーボードなどによる文字の入力」です。
研究では、Feitら(2016年、20〜55歳の30人、フィンランド語または英語の書き取り)が、自己流で打つ人でも、講習を受けたタッチタイピストと同じ程度の速さに届く人がいて、両群に有意な差はなかった、と報告しています(全体は34〜79 WPM)。Dhakalら(2018年、自発的に参加した約17万人で主に10代〜若い成人、英文)は、タイピングの講習を受けたと答えた人の平均が54.4 WPM、受けていない人が49.0 WPMで、差は小さい(効果量 d=0.27)と報告しています。どちらも英語(Feitはフィンランド語も)の文章を打つ実験で、日本語の入力にも日本の小学生にも、そのまま当てはめた結果ではありません。
このため、「学校で必須」とも「不要」とも言い切れません。どんな人に向くかは、ブラインドタッチは必要?で条件ごとに書いています。
Q8
タイピングが増えると、手書きはどうなる?
審議まとめは、書写について、デジタル学習基盤の下でタイピング等による文字入力の機会が増える中にあっても、文字を正しく認識し、正確に書く力を身に付けることなどが重要だとして、小中学校段階の書写の指導を引き続き重視するとしています。とりわけ小学校では、手書きによる書写の丁寧な指導を推進するとあります。
書字に困難さがある児童生徒については、デジタル学習基盤の活用や代替措置の積極的な提供を含め、一人ひとりの特性を踏まえて指導を行う必要がある、とも書かれています。
Q9
学校のローマ字と、ローマ字入力は同じ?
別のものです。令和7年に新しい「ローマ字のつづり方」(令和7年内閣告示第4号)が示され、昭和29年12月の内閣告示第1号・内閣訓令第1号は廃止されました。文化庁のQ&A(問52)は、情報機器の入力方法への影響はない、としています。
Q&Aは、「ローマ字入力」を、漢字仮名交じり文を表示する方法の一つとして、便宜的にローマ字つづりの仕組みを援用しているもの、と説明しています。そのうえで、「ローマ字のつづり方」は、ローマ字入力の方法に何ら変更を求めるものではない、としています。詳しくはヘボン式と訓令式、タイピングはどっち?へ。
FAQ
ほかによくある疑問
Q. 学年別のWPM目標は、公的に決まっていますか?
決まっていません。公的な値は、字/分(入力できた文字の数)の調査結果と、国の目標だけです。字数をWPMに換算する式は、調査報告書に書かれていません。WPMの定義はWPMの平均と目安にあります。
Q. 次の情報活用能力調査は、いつ行われますか?
確認できませんでした。文部科学省の調査ページ(2026年10月18日確認)には、令和3年度実施分までが載っています。
Q. 授業での進め方や、学校向けの機能は、どこで調べればよいですか?
授業の進め方はタイピング授業の指導案に、タイピング無双の学校向け機能は先生方へにあります。制度の最新情報は、文部科学省のサイトで確かめてください。
Q. この記事の内容が古くなっていないかは、どう確かめますか?
各章に出典の資料名があり、章末に一覧があります。文部科学省の「情報活用能力調査」のページと、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」のページで、新しい資料が出ていないかを確かめてください。
SOURCES
出典
この記事の公的な数字と文言は、次の資料で確かめました(確認日:2026年10月18日)。ページ番号はPDFの通しページです。
- 文部科学省「情報活用能力調査 調査結果」(令和5年3月) — 概要(p.3)、2.4 文字入力の特徴(p.56〜57)
- 文部科学省「情報活用能力調査」のページ — 最新の調査が令和3年度実施分であることの確認
- 文部科学省「教育DXに係る当面のKPI」(令和6年4月22日 デジタル行財政改革会議(第5回)資料4) — KPI一覧(p.3)
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」 — コンピュータ等や教材・教具の活用、コンピュータの基本的な操作やプログラミングの体験(p.91・p.93)
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」 — 第3学年及び第4学年 (1) ウ(p.80)、内容の取扱い 第3の2 (1) ウ(p.167)
- 中央教育審議会 教育課程部会「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」(令和8年10月5日) — 第1・2部(1/4)p.38・p.60・p.74・p.79・p.140・p.141、第3部(1)(2/4)p.71、第3部(2)(3/4)p.159・p.165・p.186
- 文部科学省「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」(令和8年10月8日 教育課程企画特別部会 参考資料3) — 答申(冬頃予定)・改訂(年度末予定)・全面実施の年度
- 教育課程企画特別部会(令和7年5月12日)資料1-1 論点資料⑥「情報活用能力の抜本的向上」 — 中学校・高等学校の位置づけ、情報Ⅰは必履修(2単位)(p.25)
- 文部科学省「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」(令和4年3月改訂版) — 令和3年4月からの1人1台端末の本格開始(p.2)
- 文部科学省「国策としてのGIGAスクール構想の更なる推進」(令和7年3月) — 学校におけるICT環境整備状況の推移(p.2)
- 文部科学省「GIGAスクール構想の推進〜1人1台端末の着実な更新〜」(令和5年度補正予算) — 基金・補助基準額・補助率(p.5)
- 文部科学省「GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータ最低スペック基準」(令和6年4月17日) — 2.5 周辺機器(p.8)
- 文部科学省「高等学校学習指導要領 情報科関係資料」 — 共通必履修科目「情報Ⅰ」
- 大学入試センター「令和7年度大学入学共通テストの主な変更点について」 — 情報を出題教科に追加(試験時間60分・配点100点)(p.3)
- 大学入試センター「令和9年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト 出題教科・科目の出題方法等」 — 『情報Ⅰ』60分(100点)
- 文化庁「『ローマ字のつづり方』(令和7年内閣告示第4号)に関するQ&A」 — 問1(p.6)、問52(p.22)
- Feit, Weir, Oulasvirta「How We Type」CHI 2016 — 自己流とタッチタイピングの速さの比較(成人30人)
- Dhakal, Feit, Kristensson, Oulasvirta「Observations on Typing from 136 Million Keystrokes」CHI 2018 — 講習の有無による速さの比較(約17万人・英文)
SUMMARY
まとめ
学校のタイピング教育の制度は、学習指導要領(コンピュータで文字を入力する基本的な操作の習得)、情報活用能力調査と国の目標(字/分)、GIGAスクールの端末とキーボード、高校の情報Ⅰ、そして審議まとめ段階の次期学習指導要領、の順に整理できます。
数字を使うときは、単位(字/分とWPM)と、決まったことか検討中のことかを区別してください。この記事は、2026年10月18日に確かめた内容です。