GUIDE — DAILY PRACTICE
タイピングは毎日どれくらい練習すれば速くなる? 1日の練習時間と期間を、研究と記録で見る
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- タイピング無双 開発者
「タイピングの練習は、1 日何分やればいいのか」「何日で上達するのか」。先に、研究と記録から言えることと、言えないことを分けて書きます。書いているのはタイピング無双の運営者 (開発者) です。
言えるのは、同じ練習時間なら、詰め込むより分けて練習したほうが効率的だったことです。郵便局員 72 人にタイピングを教えた 1978 年の実験で、いちばん効率がよかったのは「1 日 1 時間を 1 回」の群、いちばん悪かったのは「1 日 2 時間を 2 回」の群でした。
言えないのは、「毎日 10 分で十分」「◯日で◯ WPM」です。実験の練習の最短単位は 1 回 1 時間で、10 分や 15 分が効くかは確かめられていません。期間も、鍵盤全体を覚えるまでに平均およそ 35〜50 時間かかった、という幅があるだけです。
タイピング無双の記録では、ランダム対戦を 100 戦続けた人の WPM は最初の 10 戦より平均 +12%、300 戦続けた人は +20% でした。ただし続けた人だけの集計で、約束ではありません。後半では、速度演習で自分の伸びを測る方法も書きました。
ANSWER
結論:何が分かっていて、何が分かっていないか
細かい話の前に、研究と記録で「言えること」と「言えないこと」を並べます。
分かっている:同じ時間なら、分けて練習するほうが効率的
Baddeley と Longman (1978) の実験では、1 日 1 時間を 1 回の群が最も効率的で、1 日 2 時間を 2 回の群が最も非効率でした。著者は、可能なら訓練は集中ではなく分散させるべきだと結論しています。
分かっていない:毎日何分がいいのか、短い練習が効くのか
実験で最も短かった 1 回は 1 時間です。5 分・10 分・15 分の練習が、同じように効くのかは確かめられていません。週に何回以上やればいいか、も同じです。
約束できない:何日で何 WPM になるか
実験では、鍵盤全体を覚えるまでに平均およそ 35〜50 時間かかりました (概数)。タイピング無双の記録では、続けた人の WPM は 100 戦で +12%、300 戦で +20% でしたが、これは続けた人だけの集計です。人によって大きく違うので、日数と WPM は結びつけません。
THE STUDY
研究では、分けて練習するとどれくらい有利だった?
Baddeley と Longman の実験 (Ergonomics 誌、1978 年) の中身です。英国の郵便局で、タイプライターもピアノなどの鍵盤楽器も使った経験がないと答えた志願者 72 人 (19〜46 歳) を、18 人ずつ 4 群に分けました。郵便番号に使うアルファベットと数字のコードを、タイプライターで打つ訓練をします。群ごとに、1 回が 1 時間か 2 時間、1 日に 1 回か 2 回です。
| 群 | 1 日の訓練 | 鍵盤全体を覚えるまでの平均時間 (概数) | 60 時間分の訓練にかかる予定の期間 |
|---|---|---|---|
| 1 日 1 時間を 1 回 | 1 時間 | 約 35 時間 (最も効率的) | 12 週間 |
| 1 日 1 時間を 2 回 | 2 時間 | 約 43 時間 | 6 週間 |
| 1 日 2 時間を 1 回 | 2 時間 | 約 43 時間 | 6 週間 |
| 1 日 2 時間を 2 回 | 4 時間 | 約 50 時間 (最も非効率) | 3 週間 |
表で目を引くのは、いちばん効率のよい 1 日 1 時間の群が、60 時間分の訓練に 12 週間かかる点です。1 日 4 時間の群は 3 週間で終わりますが、鍵盤全体を覚えるまでに必要な総時間は多くなりました。「分ける」とは、1 日の量を抑えて、日数をかけることです。
論文は、1 回 2 時間は長すぎ、1 時間のほうが適している、1 日 1 回は 2 回より少し効率がよいが差は大きくない、と述べています。また、参加者の感じ方は逆でした。1 日 1 時間の群は、同僚が 3 週間で学ぶことに 12 週間かけるのを不満に感じていたと論文は述べていて、満足度の評価も 1 日 4 時間の群のほうが高い結果でした。楽に感じる練習が、効率のよい練習とは限りません。
HOW LONG
1 回は何分・1 日何回がいい?
「毎日 10 分でいい」「30 分から 60 分」など、検索すると答えは割れています。研究と運営の考えを分けて書きます。
研究から言えること
1 回の練習は 1 時間までのほうが、2 時間より効率がよかったこと。1 日の練習を 2 回に分けるより、1 回のほうが少しよかったこと。同じ総時間なら、1 日の量を抑えて日数をかけるほうが有利だったことです。
研究では分かっていないこと
1 回 5〜15 分の練習の効果、週に何回以上やればいいか、日本語のローマ字入力でも同じか、は確かめられていません。「毎日 10 分が最も効く」と書いてある記事は、この研究からは言えないことを書いています。
運営の考え (研究ではありません)
時間が取れる日は、1 回 1 時間までを目安にして、それ以上やるなら日を分けるのがよさそうです。時間が取れない日は、短くても触れておくと続けやすいと考えています。ただし、これは運営の考えで、短い練習の効き目は確かめていません。
目安として、速度演習 は 1 回が 60 秒、模擬戦闘 は 1 戦が最長 180 秒です。10 分あれば、数回遊べます。
PERIOD
何時間・何日くらいで伸びる?
「何日で」に答えられる根拠は、今のところ次の 3 つの幅しかありません。出どころが違うので、同じ物差しでは比べられません。
| 何の数字か | 数字 | 出どころ |
|---|---|---|
| 鍵盤全体を覚えるまで | 平均およそ 35〜50 時間 (概数) | Baddeley & Longman 1978 (郵便番号のコード、タイプライター、初心者) |
| 手元を見ずに打つ人で報告されている速さに届くまで | 数百時間の意図的な訓練 (という先行研究を引いている) | Feit ら 2016 (CHI) |
| 続けた人の WPM の伸び | 100 戦で +12%、300 戦で +20% | タイピング無双の記録 (次の章) |
1 日 1 時間なら、35 時間は約 35 日分です。ただし、これは「鍵盤全体を覚える」までで、速さの話ではありません。熟練した速さまでは、もっと長い時間がかかります。日本語のローマ字入力で「◯日で◯ WPM」と言える研究や記録は、見つかりませんでした。
WPM の目安は WPMの平均と目安 にまとめています。伸び悩んだときの考え方は タイピングが上達しない・早くならない原因 を。
RECORDS
タイピング無双の記録では、続けた人はどれくらい伸びた?
ランダム対戦 (CPU 戦を含む) を 100 戦以上続けた人を、同じ人のまま追いました。最初の 10 戦と、最後の区間を比べています。
| 続けた人 | 人数 | WPM (最初の 10 戦 → 最後の区間) | ミス率 |
|---|---|---|---|
| 100 戦以上 (91〜100 戦目と比較) | 2,475 人 | 48.3 → 54.3 (+12.3%) | 9.40% → 9.12% |
| 200 戦以上 (151〜200 戦目と比較) | 1,474 人 | 49.9 → 58.1 (+16.5%) | 9.26% → 9.15% |
| 300 戦以上 (201〜300 戦目と比較) | 1,008 人 | 50.5 → 60.7 (+20.1%) | 9.04% → 9.02% |
40 戦以上続けた 5,127 人では、最初の 10 戦と最後の 10 戦の WPM の伸びは、中央の人で +6.1 WPM (+15.8%)、伸びた人は 88.6% でした。30 戦以上の 4,909 人で 1 人ごとの傾きを見ると、WPM がはっきり良くなった人が 63.4%、悪くなった人が 2.0% で、残りはどちらとも言えませんでした。
読むときの注意が 3 つあります。1 つめは、続けた人だけの集計なので、伸びやすい人が残っている可能性があることです。2 つめは、これは戦数で、日数ではないことです。1 日に何戦するかは人によって違うので、日数には直せません。3 つめは、速さは伸びてもミス率はほとんど変わっていないことで、ミスは別に考えます (→ タイピングのミスを減らす方法)。
伸びた分の多くは、キーとキーの間隔、特に子音を打つまでの時間でした。くわしくは タイピングが上達しない・早くならない原因 に書いています。
SLEEP
「寝ている間に定着する」は本当?
「運動の記憶は睡眠中に定着する」という説明をよく見ますが、研究は割れています。Walker ら (2002) は、一晩の睡眠のあとに運動の速さが 20% 向上し、同じ時間を起きて過ごした場合は有意な向上がなかったと報告しました。一方、Pan と Rickard (2015) は、34 本の論文・88 の群・1,296 人のメタ分析で、交絡 (睡眠以外の違い) を除くと、睡眠が運動学習を高める証拠は見つからなかったと結論しています。その後も反論が続いています (Rickard & Pan 2017)。
ですから、「寝る前に練習すると定着する」「だから毎日やるべき」とは、この記事では書きません。分けて練習するほうが効率的だった、という実験の結果は、睡眠の話とは別に成り立ちます。
REST
休むと元に戻る?
Baddeley と Longman の実験では、訓練のあと 1 か月・3 か月・9 か月のどれかで速さを測り直しました。速さは落ちていましたが、9 か月後で約 30% で、最初の 3 か月のあとは、ほとんどの群であまり増えませんでした。論文は「落ちるが極端ではない」と見ています。つまり、ゼロには戻りません。
数日休んだときにどうなるかは、この実験では調べていません。休んだあとの最初の 1〜2 回は、いつもより低くても驚かずに、まず今の速さを測り直すところから再開するのが安全です。
MEASURE
伸びをどう測る? 速度演習の使い方
伸びは、同じ条件で測らないと見えません。タイピング無双の 速度演習 は、侍・☆0・必殺技なしの 60 秒で、誰がやっても同じ条件です。結果画面には WPM・正確率・最大コンボ・ミスが出ます。
ただし、速度演習のお題は毎回ランダムです。語の長さで打ちやすさが変わるので、1 回の WPM は上下します。1 回の数字ではなく、数回のうちの最高と真ん中で比べます。次のやり方は運営の提案で、研究にもとづくものではありません。
- 01.最初の 1 回は、慣れるための回にして、数に入れない
- 02.同じ日に 3 回やり、結果画面の WPM と正確率を日付つきで書き留める
- 03.3 回のうち、最高と真ん中の WPM を残す
- 04.測るのは週に 1 回。同じ曜日、同じ時間帯、同じ打ち方で測る
- 05.3〜4 週間分を並べて、真ん中の WPM が上向いているかを見る。1 回の上下は気にしない
打ち方は途中で変えないでください。「し」を shi と打てば 3 打鍵、si なら 2 打鍵と、打ち方で打鍵の数が変わるので、WPM も変わります。ゲームは、どの打ち方で打っても正解になります。
ゲームが自己ベストとして覚えているのは、与ダメージです。WPM の推移を見たいときは、結果画面の WPM を自分で書き留めておくと比べられます。自分の WPM がどのあたりかは、WPMの平均と目安 と見比べてください。
FAQ
よくある質問(FAQ)
Q. 毎日 10 分の練習でも、意味はありますか?
意味があるかどうかは、研究では確かめられていません。実験で最も短かった 1 回は 1 時間で、10 分の練習は調べていません。運営の考えとしては、短くても触れておくと続けやすいと思っていますが、効き目の大きさは分かりません。
Q. 週末にまとめて 2 時間やるのでは、足りませんか?
「週末にまとめる」と「平日に分ける」を直接比べた実験ではありません。実験で言えるのは、1 回 2 時間より 1 回 1 時間のほうが効率がよかったことと、同じ総時間なら 1 日の量を抑えて日数をかけるほうが有利だったことです。
Q. 数日サボったら、最初からやり直しですか?
最初からにはなりません。実験では、訓練のあと 9 か月たっても、速さの落ちは約 30% でした。数日の休みの影響は調べられていません。再開したら、まず速度演習で今の速さを測り直してください。
Q. ◯日で◯ WPM になる、という目安はありますか?
ありません。実験では鍵盤全体を覚えるまでに平均およそ 35〜50 時間かかりましたが、これは速さの話ではありません。タイピング無双の記録は戦数で、続けた人だけの集計です。日数と WPM を結びつける根拠は、見つかりませんでした。
Q. タイピング無双で毎日練習するのに、お金や登録は要りますか? スマホでもできますか?
ゲーム本体は無料で、ログインなしのゲストのままで全機能を使えます。パソコン、または物理キーボードをつないだタブレットが必要で、スマホでは遊べません (この学習ガイドはスマホでも読めます)。
SOURCES
出典
この記事で外部の研究として挙げたものと、自前の集計の出どころです。URL は論文の DOI で、出版社のページに移ります(確認日: 2026 年 10 月 18 日)。
- Baddeley, A. D., & Longman, D. J. A. (1978). The influence of length and frequency of training session on the rate of learning to type. Ergonomics, 21(8), 627–635. — 郵便局員 72 人・4 群の訓練計画と、1・3・9 か月後の保持テスト
- Feit, A. M., Weir, D., & Oulasvirta, A. (2016). How We Type: Movement Strategies and Performance in Everyday Typing. CHI 2016. — タッチタイピングで報告されている速さに届くには、数百時間の意図的な訓練が要るという先行研究を引いている
- Walker, M. P., Brakefield, T., Morgan, A., Hobson, J. A., & Stickgold, R. (2002). Practice with sleep makes perfect: sleep-dependent motor skill learning. Neuron, 35(1), 205–211. — 一晩の睡眠のあとに運動の速さが 20% 向上、同じ時間を起きていた場合は有意な向上なし
- Pan, S. C., & Rickard, T. C. (2015). Sleep and motor learning: Is there room for consolidation? Psychological Bulletin, 141(4), 812–834. — 34 本の論文・88 の群・1,296 人のメタ分析。交絡を除くと睡眠が運動学習を高める証拠はないと結論
- Rickard, T. C., & Pan, S. C. (2017). Time for considering the possibility that sleep plays no unique role in motor memory consolidation: Reply to Adi-Japha and Karni (2016). Psychological Bulletin, 143(4), 454–458. — 睡眠の役割をめぐる議論が続いていることの例
- タイピング無双の記録の集計(運営者調べ・2026 年 10 月 18 日・本番データベースの読み取りのみ) — 研究への利用を許可した人だけ。ランダム対戦(CPU 戦を含む)の記録
SUMMARY
まとめ — 今日できること
分かっているのは、同じ時間なら分けて練習するほうが効率的で、1 回の練習は 1 時間までのほうがよさそうなことです。毎日何分がいいか、何日で何 WPM になるかは、研究でも記録でも約束できません。
まずは今日、速度演習 で今の速さを測ってください。その数字を書き留めて、数週間後に同じ条件でもう一度測れば、自分の伸びが見えます。基礎から固めたい人は ホームポジション道場 から始められます。