BASICS — IS TOUCH TYPING NECESSARY?

ブラインドタッチは必要? 片手1〜2本の指でも速い人がいる研究と、向く人の条件

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著者
タイピング無双 開発者

結論から書きます。ブラインドタッチ (タッチタイピング) は、必須ではありません。研究では、講習を受けていない自己流の人の中に、片手に 1〜2 本の指しか使わずに 70 WPM を超えた人がいました。

ただし、「不要」とも言い切れません。大規模なオンライン調査では、講習を受けた人の平均がやや速く、使う指が多い人ほど速い傾向がありました。また、30 人を調べた別の研究では、自己流の人はキーボードを見ている時間が長めでした。長い文章をたくさん打つ人や、画面から目を離しにくい作業が多い人には、覚える理由があります。

この記事では、二つの研究が言えることと言えないことを分けて、どんな人に向くかを条件で答えます。書いているのは、無料のタイピングゲームの運営者です。ゲームに都合のよい結論に寄せないよう、研究の限界も書きます。

ANSWER

結論:必要? 不要?

結論は三つです。

  • 1. 必須ではない

    講習を受けていない自己流の人の中に、片手に 1〜2 本の指しか使わずに 70 WPM を超えた人がいました (Feit ら 2016、30 人)。平均の速さも、講習を受けた人と自己流の人で差がありませんでした。

  • 2. 不要とも言い切れない

    大規模なオンライン調査では、講習を受けた人の平均がやや速く (54.4 対 49.0 WPM)、自己申告の使う指が多い人ほど速い傾向がありました (Dhakal ら 2018、168,960 人)。Feit らの研究では、自己流の人はキーボードを見ている時間が長めでした。

  • 3. 運営者の考えでは、向くかどうかは、打つ量と、画面を見ながら打つ場面の多さで決まる

    「向く人の条件」の表で、状況別に整理します。

どちらの研究も、英語などの文章を打つ実験です。日本語のローマ字入力を調べたものではありません。

TERMS

「ブラインドタッチ」と「タッチタイピング」はどう違う?

どちらも、キーボードを見ないでキーを打つことを指します。コトバンクで引くと、「精選版 日本国語大辞典」は「キーボードを見ないでキーを打つこと。タッチタイピング」と説明し、「IT用語がわかる辞典」(講談社) は「タッチタイピング。和製語。ブラインド+タッチ」と説明しています。英語の研究では touch typing と呼びます。

検索の候補には、「差別用語」「言い換え」が出ることがあります。この記事を書くために調べた範囲では、辞典や公的な指針に、そうした扱いの記述は見つかりませんでした。判断はせず、同じ意味で「タッチタイピング」と言い換えても通じる、とだけ書きます。

この記事では、検索で使われることの多い「ブラインドタッチ」を見出しに使い、研究の説明では「タッチタイピング」も使います。

STUDY 1

Feit らの研究 (2016):自己流でも速い人がいた

Feit らは、ふだんタイピングしている30人を調べました。20〜55 歳 (平均 31 歳)、30 人全体の速さは 34〜79 WPM で、速さが広がるよう選ばれています。13 人が、講習などでタッチタイピングを習ったと答え、17 人は講習を受けたことがない自己流でした。画面の文章を書き写す課題で、指の動きは特殊なカメラで、視線は眼鏡型の装置で記録しています。

  • 速さは同じ程度

    平均は、講習ありが 57.8 WPM、講習なしが 58.9 WPM で、統計的な差はありませんでした。修正されずに残ったミスの割合も、0.76% 対 0.47% で、差は有意ではありませんでした。

  • 片手 1〜2 本の指でも、70 WPM を超えた人がいた

    片手に1本または2本の指しか使わない人の中にも、70 WPM を超える人がいました。使う指の数は、講習ありで平均 8.5 本、講習なしで 6.2 本でした。ただし、中指が中心の打ち方のグループには、55 WPM を超えた人がいませんでした (人数が少なく、不利な打ち方かどうかは分からない、と論文にあります)。人差し指が中心の人は、右手が2人、左手が6人と少数でした。

  • 手元を見る時間は、自己流のほうが長かった

    キーボードを見ていた時間の割合は、講習なしが 0.41、講習ありが 0.20 でした。視線を画面とキーボードの間で動かす回数も、講習なしのほうが多くなりました (1文あたり 1.2 回対 0.92 回)。著者は、自己流は画面への注意が要る作業では不利かもしれない、と書いています。

  • 速い人に共通していたのは、指の数ではなかった

    速さと関係していたのは、同じ文字を毎回同じ指で打つこと、次のキーに向けて指を先に動かすこと、手全体を大きく動かさないこと、の3つでした。30人の中での分析で、これらを鍛えれば速くなると確かめた実験ではありません。

限界もあります。30人と少なく、速さの幅が広くなるよう選ばれた参加者です。画面の文章を書き写す課題で、英語とフィンランド語でした。日本語のローマ字入力や、考えながら文章を書く場面で同じ結果になるかは、分かりません。

STUDY 2

Dhakal らの研究 (2018):講習経験者の平均はやや速かった

Dhakal らは、オンラインの打鍵テストで、168,960 人・約 1 億 3,700 万回の打鍵を集めました。英語の15文を書き写す課題です。

  • 全体の分布

    平均は 51.6 WPM (標準偏差 20.2)。下位 10% は約 26 WPM 未満、上位 10% は約 78 WPM 超で、最速は 120 WPM 以上でした。

  • 講習経験者の平均は、やや速かった

    講習経験ありは 54.4 WPM、なしは 49.0 WPM でした。差は約 5 WPM で、人によるばらつき (標準偏差 約 20 WPM) に比べると小さい差です。修正されずに残ったミスの割合は、1.02% 対 1.23% で、差はごくわずかでした。

  • 使う指が多いほど速い傾向

    自己申告の使う指の数が多い人ほど、速い傾向がありました (相関 0.38、直線的な関係ではない)。9〜10 本と答えた人は 47.6% でした。相関であり、指を増やせば速くなる、という意味ではありません。

論文自身が限界を書いています。参加者は、タイピング講座を出す会社のサイトから自分で参加した人で、若く (平均 24.5 歳)、68% が米国からの参加、72% が講習経験ありでした。Feit らの研究 (講習経験者 43%) と結論が違うのは、集まった人の違いが理由かもしれない、とも書かれています。

READING

二つの研究をどう読めばいい?

  • 「講習を受けていないから遅い」とは言えない

    二つとも、講習を受けていない人に速い人がいました。

  • 平均では、講習経験者がやや速い

    約 5 WPM の差です。ただし、講習が原因とは言えません。もともと練習量の多い人が講習を受けている、といった別の理由があるかもしれません。

  • 手元を見る時間の差は、小さな研究の結果

    視線を調べたのは、Feit らの30人だけです。Dhakal らは視線を調べていません。

  • 日本語は調べられていない

    どちらも英語などの文章です。ローマ字で打ち、変換する日本語の入力で同じかは、確かめられていません。

WHO

どんな人に向く? 条件で見る

「必要」「不要」の二択にせず、状況別に整理します。表の「理由」には、研究の数字か、計算で説明できるものだけを書きました。

あなたの状況覚える価値理由
長い文章を、毎日たくさん打つ大きい平均では講習経験者が約 5 WPM 速かった (原因は不明)。小さな差でも、打つ量が多いほど、かかる時間の差が積み上がる
画面や資料を見ながら打つ場面が多い (会議のメモ、見本を見ての入力など)大きい自己流の人は、キーボードを見ていた時間の割合が長かった (0.41 対 0.20)。著者は、画面への注意が要る作業では不利かもしれない、と書いている
速さより、間違えないことが大事どちらとも言えない修正されずに残ったミスの割合は、Feit らでは差がなく (0.76% 対 0.47%)、Dhakal らでは講習経験者がわずかに少なかった (1.02% 対 1.23%)
打つ量が少ない (メールを数通など)急がなくてよい速くなっても、短くなる時間が小さい
今の打ち方で速く打てていて、困っていない覚えなくてよい自己流でも 70 WPM を超える人がいた (Feit らの30人)
疲れや痛みを減らしたいこの記事では言えない疲れや痛みとの関係を示す研究は、確かめられていない。痛みやしびれが続くときは、医療機関に相談する
ブラインドタッチを覚える価値を、状況別に整理した表 (研究の出典は記事の最後)

「覚える価値」は運営者の判断です。研究が示したのは、平均の差が小さいことと、手元を見る時間に差があることの二つで、「だから覚えるべき」とは言っていません。打つ量から時間を見積もる方法は仕事で使えるタイピング速度は?に、疲れや痛みはタイピングで手首・腕が疲れる、痛いときに書きました。

START

覚えるなら、どこから始める?

覚えるのにかかる時間は、約束できません。研究では、初めて習う人がキーボード全体を覚えるまでに、平均でおよそ 35〜50 時間かかりました (Baddeley と Longman 1978、郵便局員 72 人、タイプライターのキーボードで英数字のコードを打つ訓練。4 つの群の平均は 34.9〜49.7 時間でした)。また Feit らは、タッチタイピストが報告されている速さに届くには数百時間の訓練が要ると、文献を引いて書いています。

FAQ

よくある質問(FAQ)

  • Q. 人差し指だけで打っています。仕事に支障はありますか?

    研究では、片手に 1〜2 本の指しか使わずに 70 WPM を超えた人がいました。支障があるかは、打つ量と、画面を見ながら打つ場面の多さしだいだと運営者は考えます。かかる時間の見積もり方は、仕事で使えるタイピング速度は?に書きました。

  • Q. ブラインドタッチができると、疲れにくくなりますか?

    疲れや痛みとの関係を示す研究は、確かめられていないので、言えません。痛みやしびれ、腫れが続くときは、医療機関に相談してください。目安はタイピングで手首・腕が疲れる、痛いときにあります。

  • Q. 講習を受けた人は、みんな速いのですか?

    いいえ。Feit らの研究では、講習ありの人の平均は 57.8 WPM、講習なしの人は 58.9 WPM で、有意な差はありませんでした (p = 0.38)。論文は、効率の悪いタッチタイピストも、効率のよい自己流の人も多い、と書いています。Dhakal らでも、差は約 5 WPM でした。

  • Q. 大人になってから覚えても、間に合いますか?

    年齢別の効果を調べた研究は、調べた範囲では見つかっていないので、言い切れません。考え方は社会人のタイピング、我流は直すべき?に書きました。

SUMMARY

まとめ — 条件で決める

ブラインドタッチは必須ではなく、不要とも言い切れません。自己流にも速い人がいること、平均では講習経験者がやや速いこと、自己流の人は手元を見る時間が長めであることが、研究から言えます。

打つ量が多い人や、画面から目を離しにくい作業が多い人には、覚える理由があります。困っていなければ、今の打ち方で足ります。覚えるなら、指の位置から始めます。

SOURCES

出典

この記事の研究の数字と辞典の文言は、次の資料の本文で確かめました(確認日:2026年10月18日)。論文は英語です。

  1. Feit AM, Weir D, Oulasvirta A. (2016) How We Type: Movement Strategies and Performance in Everyday Typing. CHI ’16. — 30 人、34〜79 WPM。速さ・使う指の数・視線は Results、速さと関係する 3 つの要素は Discussion
  2. Dhakal V, Feit AM, Kristensson PO, Oulasvirta A. (2018) Observations on Typing from 136 Million Keystrokes. CHI ’18. — 168,960 人。速さと講習経験は Table 3、指の数は “Typing speed versus number of fingers”、限界は Limitations
  3. Baddeley AD, Longman DJA. (1978) The influence of length and frequency of training session on the rate of learning to type. Ergonomics 21(8), 627–635. — 郵便局員 72 人。キーボード全体を覚えるまでの時間は Table 1
  4. コトバンク「ブラインドタッチ」(精選版 日本国語大辞典、IT用語がわかる辞典)
  5. タイピング無双の仕様は 2026 年 10 月 18 日時点

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