HOW TO IMPROVE — FOR ADULTS

タイピングが遅い社会人は、我流を直すべき? 判断の目安と練習の進め方

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タイピング無双 開発者

結論から書きます。我流で打っていて、速さや打ちやすさで困っていなければ、急いで直さなくて大丈夫です。研究では、講習を受けていない自己流の人にも、70 WPM を超える人がいました。「自己流は必ず頭打ち」とは言えません。

ただし、直す理由になる場面もあります。自己流の人は、キーボードを見ている時間が長い傾向がありました。画面や資料を見ながら打つ仕事が多い人は、この点で差が出やすくなります。この記事では、研究が言えることと言えないことを分けて、直すかどうかの判断の目安と、直す場合の進め方を書きます。

書いているのは、無料のタイピングゲーム「タイピング無双」の運営者です。年齢の話は、研究が調べた範囲 (すでに熟練した人の速さ) を超えて言い切らないようにしました。

ESSENCE

結論:我流は直したほうがいい?

細かい話の前に、結論を3つにまとめます。

  • 1. 困っていなければ、急いで直さなくてよい

    講習を受けていない自己流の人と、講習を受けた人で、平均の速さに差がなかった研究があります (Feit ら 2016)。一方、講習を受けた人の平均がやや速かった大規模調査もあります (Dhakal ら 2018)。研究は割れていて、「自己流だから遅い」とは言えません。

  • 2. 画面や資料を見ながら打つ場面が多いなら、直す理由になる

    Feit らの研究では、自己流の人はキーボードを見ている時間の割合が長めでした (自己流 0.41、講習あり 0.20)。画面から目を離しにくい場面が多い人は、この点が直す理由になりえます。Feit らの研究では、指の数よりも、同じキーを毎回同じ指で打つことのほうが、速さと関係していました。

  • 3. 直すなら、仕事の入力と練習を分ける

    直している間の速さの変化を調べた研究は、調べた範囲では見つかっていません。仕事の入力は今までの打ち方のままにして、練習の時間だけ新しい打ち方を試すと、仕事への影響を抑えられます。これは運営者の考えで、研究の結果ではありません。

以下で、研究の中身、判断の目安、進め方の順に書きます。

RESEARCH

「自己流は頭打ち」は本当? 研究が示すこと

「自己流のままでは必ず頭打ちになる」という説明を見かけることがあります。二つの研究を確かめたところ、そこまでは言えませんでした。

研究調べた人わかったこと注意
Feit ら 2016 (CHI)30 人 (20〜55 歳、平均 31 歳)。画面の文章を書き写す課題。13 人が講習でタッチタイピングを習ったと答え、17 人は講習を受けたことがない自己流平均は講習あり 57.8 WPM、自己流 58.9 WPM で、統計的な差なし。片手に 1〜2 本の指で 70 WPM を超えた人もいた。キーボードを見ていた時間の割合は、自己流 0.41、講習あり 0.20人数が少ない。見本を書き写す課題で、考えながら打つ仕事とは違う。英語とフィンランド語
Dhakal ら 2018 (CHI)168,960 人。オンラインの打鍵テストに自分で参加した人 (平均 24.5 歳、68% が米国、72% が講習経験あり)。英語の 15 文を書き写す課題全体の平均は 51.6 WPM。講習経験ありは 54.4、なしは 49.0 WPM (差は小さい)。自己申告の使う指の数が多いほど速い傾向 (相関 0.38)参加者は若く、タイピングに関心のある人が多い。相関であり、指を増やせば速くなるとは言えない。英語
「自己流は頭打ち」を確かめるための二つの研究 (出典は記事の最後)

二つを並べると、次のように読めます。自己流の人にも、速い人はいます。一方、平均で見ると講習経験者がやや速い、という結果もあります。差は約 5 WPM で、人によるばらつき (標準偏差 約 20 WPM) に比べると小さい差です。小さい調査と大きい調査で結論が少し違うのは、集まった人の違いが理由かもしれないと、Dhakal らは論文に書いています。

どちらも英語などの文章を打つ実験で、日本語のローマ字入力を調べたものではありません。日本語でも同じ結果になるかは、確かめられていません。

Feit らは、速い人の動きを解析して、速さと関係する3つの要素を挙げています。30 人の中での分析で、「これをやれば速くなる」と確かめた実験ではありません。

  • 同じ文字を、毎回同じ指で打つ

    指の数よりも、キーと指の対応が一定かどうかが関係していました。10本指でなくても、決めた指で打ち続けることが大事、ということです。

  • 次のキーに向けて、指を先に動かす

    前のキーを打っている間に、次に打つ指がもう動き出している人ほど、速い傾向がありました。

  • 手全体を大きく動かさない

    遅い人ほど手全体が動き、速い人は手の位置が安定していました。

CHECK

自分は直すべき? 判断の目安

WPM の数字だけでは決められません。次の4つの問いで考えてください。数字のしきい値は書きません。研究にも公的な基準にも、「この速さなら直す」という線は無いためです。

  • 1. 速さや打ちにくさで、実際に困っていますか

    メールや資料に時間がかかる、締め切りに響く、など具体的な困りごとがあるかを考えます。無ければ、直す理由は弱いです。かかる時間は、仕事で使えるタイピング速度は?の計算で見積もれます。

  • 2. 画面や資料を見ながら打つ場面が多いですか

    会議で画面共有を見ながらメモを取る、紙の資料を見ながら入力する、などです。自己流の人は手元を見る時間が長い傾向がありました (0.41 対 0.20)。この場面が多いなら、直す価値があります。

  • 3. 指の使い方は、毎回同じですか

    同じ文字を日によって違う指で打っていると、速さが伸びにくいかもしれません (同じ指で打つ人ほど速い傾向がありました)。スマートフォンで手元を撮影して見返すと分かります。

  • 4. 1日に打つ量は多いですか

    打つ量が少なければ、速くなっても短くなる時間は小さくなります。量が多いほど、速さの差が積み上がります。

困っておらず、画面を見ながら打てているなら、今のままで問題ありません。速さの位置づけはWPMの平均と目安、手元を見ない打ち方が向く人の条件はブラインドタッチは必要?に書きました。

HOW TO

直すと決めたときの進め方

直すと決めた場合の進め方です。順番は運営者の考えで、この順に進めると効果が出る、と確かめた研究があるわけではありません。

  1. 01.今の速さと正確さを測る。速度演習を数回遊び、結果の WPM と正確率を控えておきます (語は毎回変わるので、数回の真ん中を見ます)
  2. 02.各キーを担当する指を決める。10本指でなくてよいので、同じキーは毎回同じ指で打つと決めます
  3. 03.手元を見ないで打てるキーを、少しずつ広げる。中段 (ホームポジションの段) から始めます
  4. 04.練習の時間と仕事の時間を分ける。練習は短く、決まった時間に。仕事の入力は今までの打ち方でかまいません
  5. 05.数週間おきに、同じ条件で測り直す。伸びているか止まっているかを数字で見て、続けるかどうかを決めます

各手順の詳しい説明は、指の担当がホームポジション図解、見ないで打つ練習がブラインドタッチの覚え方にあります。

かかる期間は約束できません。研究では、初めて習う人がキーボード全体を覚えるまでに、平均でおよそ 35〜50 時間かかりました (郵便局員 72 人、1978 年。群によって違い、表が読みにくいため概数です)。また Feit らは、タッチタイピストが報告されている速さに届くには数百時間の訓練が要ると、文献を引いて書いています。どちらも初めて習う人の話で、すでに自己流で打てる人が直す場合にそのまま当てはまるかは分かりません。

同じ1978年の研究では、同じ時間を使うなら、まとめてやるより分けたほうが効率がよい、という結果も出ています (1日1時間を1回の群が最も効率的で、1日2時間を2回の群が最も非効率でした)。分け方はタイピングは毎日どれくらい練習すれば速くなる?に書きました。

AGE

年齢は関係ある? 研究が言える範囲

言えること。Salthouse (1984) は、19〜72 歳、17〜104 net WPM の熟練したタイピストを調べました。高齢の人は、指をたたく速さや選択反応が遅かったのに、タイピングの速さは遅くありませんでした。先の文字を見越して打つことで補っている、と研究者は解釈しています。

言えないこと。この研究は、すでに熟練した人の話です。新しくタイピングを学ぶ大人や、我流を直す大人が、年齢によってどれだけ伸びるかを調べた研究は、この記事を書くために調べた範囲では見つかりませんでした。Feit らの参加者は 20〜55 歳の 30 人、Dhakal らは平均 24.5 歳で、年齢別の学び直しの効果を示す研究ではありません。

タイピング無双の記録も同じです。年齢が分からないので、年齢別の伸びは書けません。ですから、「何歳でも必ず伸びる」とも「年齢的に難しい」とも、言えません。

MEASURE

今の速さはどうやって測る?

タイピング無双の速度演習で測れます。60 秒で、侍・☆0・必殺技なしの全員同じ条件で遊び、結果に WPM と正確率が出ます。WPM は、正しく打ったローマ字の打鍵数 ÷ 5 ÷ 分で、日本語の文字数ではありません。出る語は毎回変わるので、1 回の数字よりも、数回の真ん中を見てください。

ゲームの WPM は、変換や文章を考える時間を含みません。仕事の入力の速さとは同じではないので、自分の上達を同じ物差しで追うために使います。仕事に必要な速さは仕事で使えるタイピング速度は?で計算できます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

  • Q. 我流でも仕事ができています。直さないと損ですか?

    困っていなければ、急ぐ必要はありません。研究では、講習を受けていない人にも 70 WPM を超える人がいました。ただ、画面を見ながら打つ場面が多いなら、手元を見る時間を減らせることに利点があります。

  • Q. 人差し指だけで打っています。ブラインドタッチにしないとだめですか?

    研究では、片手に 1〜2 本の指で 70 WPM を超えた人がいました。どんな人に向くかは、ブラインドタッチは必要?に条件で書きました。

  • Q. 直している間、遅くなりますか?

    この点を確かめた研究は、調べた範囲では見つかっていません。仕事の入力と練習の時間を分けると、仕事への影響を抑えられます。

  • Q. 40代・50代からでも間に合いますか?

    年齢別の効果を調べた研究は見つかっていないので、間に合う・間に合わないとは言い切れません。熟練したタイピストでは、年齢が高い人でも打つ速さが遅くなかった、という研究 (Salthouse 1984) はあります。まず数週間試して、同じ条件で測り直して決めてください。

  • Q. WPM が20〜30台です。どこから始めればいいですか?

    練習の順番はタイピングが早くなる練習方法に、伸び悩んでいるときの原因はタイピングが上達しない・早くならない原因にまとめました。

SUMMARY

まとめ — 困りごとで決める

我流を直すかどうかは、速さの数字よりも、困りごとで決めてください。研究は、自己流にも速い人がいること、平均では講習経験者がやや速いこと、自己流の人は手元を見る時間が長めであることを示しています。「必ず頭打ち」とは言えません。

直すなら、仕事の入力と練習を分けて、数週間おきに同じ条件で測り直します。最初の一歩は、今の速さを測ることです。

SOURCES

出典

この記事で挙げた研究です。URL は論文の DOI で、出版社のページに移ります(確認日: 2026 年 10 月 18 日)。タイピング無双の仕様も同日時点です。

  1. Feit, A. M., Weir, D., & Oulasvirta, A. (2016). How We Type: Movement Strategies and Performance in Everyday Typing. CHI 2016. — 参加者 30 人。講習の有無で速さに有意差なし。キーボードを見ていた時間の割合は 0.41 対 0.20
  2. Dhakal, V., Feit, A. M., Kristensson, P. O., & Oulasvirta, A. (2018). Observations on Typing from 136 Million Keystrokes. CHI 2018. — 168,960 人。講習経験あり 54.35 WPM・なし 49.00 WPM(d = 0.27)。使う指の数と速さの相関 0.38
  3. Salthouse, T. A. (1984). Effects of age and skill in typing. Journal of Experimental Psychology: General, 113(3), 345–371. — 19〜72 歳・17〜104 net WPM の熟練したタイピスト
  4. Baddeley, A. D., & Longman, D. J. A. (1978). The influence of length and frequency of training session on the rate of learning to type. Ergonomics, 21(8), 627–635. — 郵便局員 72 人・4 群。鍵盤全体を覚えるまでの平均時間(概数)と分散練習の効率

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